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催眠小説『小さな手に握られた真実を求めて』~誰にも私の本心は分からない~

催眠小説
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明日になって、私は重たい体を起こしてベッドの上で大きく伸びをする。
窓の外には眩しい太陽の光が見えて、「遅刻しちゃう!」と思って慌てて飛び起きた。

台所にはすでに母親が忙しなく右へ左へと動きながら、私の朝ごはんとお弁当と父親の朝ごはんを作っているようで、フライパンからジュージューと卵焼きが焼ける音が聞こえてくる。

テーブルに座ると父がすでに新聞を広げて座っていたので、父の邪魔にならないように静かに隣に座って、母親が作っている朝食が出来上がるのをぼんやりと待つ。

この空間では母親だけがバリバリと動いて働いていて、なんだか申し訳ない気持ちになってくる。

そして、昨夜考えてたリエのことが思い出されて、深いため息が出そうになるが、父や母に何があったのかと聞かれるのが億劫で、なんとか溜息を飲み込んだ。

父が新聞を捲る音が聞こえてきて、私は憂鬱な気持ちをなんとか平常心に保とうと内心は必死だった。

朝食を食べ終えて歯磨きを終えて玄関を出ても心はやはり晴れず、雲一つない青空がとても憎い。

「どうして私の頭の中はいつも心配事ばかりなのだろう」と思いながら、人生で何一つ良いことが起こらない自分の人生を呪う。

目の前で信号が赤に変わってしまったことにさえ、殺意を感じてしまう。

私の予想では、リエはきっと何事もなかったかのようにいつも通り挨拶してくるはずだ。
でも、今リエに明るく笑顔を向けられたとしても、私はもうそれを真に受けてあげられない。

じゃあ、私はどうしたいの?と自分の心に問うた時、私の心は「ほっとけばいいじゃん!」と明るく言った。

「え?何で?」と私はビックリして、もう一度自分の心に「でも、どうしてほっとくの?」と問いかけてみると、私の心はあっけらかんと「だって、あなたに関係ないじゃん!」と明るくはっきりした口調で答えてくる。

その答の意味がよく分からなかったけれど、とりあえず駐輪場に自転車を置いて、駅に向かって歩き始めた。
向こうのホームに電車が到着するようで、カンカンカンと踏切がけたたましい音を出しながら線路への進入禁止バーが下がっていく。

その光景をぼんやりと眺めながら、まだリエへの言葉が決められない。
だって私は、昨日の話の続きがしたいんだ!
でも、リエは絶対続きを話してくれず、はぐらかすはず。

そんなことを悶々と考えていると、やがてホームに列車が到着して、満員電車の中へと吸い込まれていく。

リエの姿はそこにはなかった。

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