今回は『催眠ガール2』のすぐ後に出版された大嶋信頼先生の新刊『動物にタイプ分けで簡単!あなたの周りのイヤな人から身を守る方法』のレビューです。
かわいい表紙からは想像もつかない胸にグサグサくる鋭い内容で、また1つ自由になってしまいました!
おすすめポイント
人に対して不快な感情になった時、「なんとかこの嫌な気持ちを拭いたい!」と自分の心をコントロールしようとしたり、相手の言動を変化させようと努力します。
だけど、そんなことをしても相手はまた不快なことをしてくるし、むしろ状況はどんどん悪化していってしまう…。
では、なぜ「あの人イヤだな」と思ってしまうのか?
本書を読めば、その原因と理由と対処法が分かります。
「この人、嫌だな…」と思う人と接していくうちに、どんどん自分もイヤな人になっていっているような気がする人にオススメの本です。
この本を最後まで読めば、これ以上自分がイヤな人化してしまわないはずです!
その他、
・夜寝ようとしたら人への怒りが収まらなくて、すべてをぶち壊したくなってしまう人。
・みんなと仲良くなりたいのに、どんどん人間が嫌いになってしまう人。
こんな人はぜひこの本を手に取って読んでみてください。
グサグサと胸に刺さって痛い部分もあるかもしれませんが、『良薬は口に苦し』な良書です。
イヤな人と距離を置くことで得られるメリットや、イヤな人と接することで自分も「イヤな人」にならないための掟を読むことで、無理せず自然と距離を置けるようになるでしょう。
この本を読んで、イヤな人に使うムダな時間を減らし、自分の中の罪悪感を消せるかも。
あらすじ
あなたの周りにも「あの人、イヤだなあ…」と思う人、いるでしょうか?
でも、「イヤな人」だと認識しているのに関係を切れなかったり、イヤな人にも良い顔をしてしまう自分がいます。
そんな自分もイヤになるし、イヤな人と離れたいのにイヤな人のことばかり考えてしまって、心を振り回されてしまいます。
この本では、あなたのまわりにいるイヤな人を「あなたとは生きる目的や習性が違う生き物」ということで下記の7タイプに分けて紹介されています。
あれこれ話を聞き出そうとしてくる人。
いつも自慢話をしてくる人。
常にイライラしていて攻撃的な人。
口を開くと愚痴ばっかりな人。
話題をかっさらって自分アピールしてくる人。
会うたびにコロコロ価値観が変わる人。
自分の価値観を押しつけてくる人。
これらのタイプの方々との距離の置き方や遠ざける方法がそれぞれ詳しく解説されています。
あなたをイヤな気分にさせてくるあの人は、あなたが考えていることと全く違う価値観で動いているのかもしれません。
「同じ人間」と思うとどうしても「なんで分からないの!」という怒りや落胆を感じてしまいますが、「違う生き物」と捉えることで上手な接し方が見えてくるはずです。
見どころ5選
この本の注目ポイントを5つ、厳選してみました!
①怒りが湧くのは、相手を変えようとしていたから
私は「イヤだな」と思うことをされた時、なかなかモヤモヤが取れないのでよく「〇〇してほしい」ということを相手に伝えていました。
だけど、これって相手をコントロールして変えようとする行為だと気づいてしまったのです。
なぜなら、このままだと相手に好きになってもらえないから。
イヤな人に関わらなければ良いだけなのに、イヤな人のことをずっと考えてモヤモヤしてしまうのは「イヤな人にも好かれたい」という思いがあるからです。
そして、自分が人に嫌われることを恐れていることにく気づかぬまま、「なんで」ばかりが頭の中に渦巻いて、イヤな人に対して怒りが湧いてくる。(p32)
「怒り」が湧くのは、相手を変えようとしている証拠なんです。
そして、怒りを感じる脳の部位は同時に「怯え」も感じます。
なので「イヤな人にまたあんなこと言われたらどうしよう…」という怯えは周りには「殺気立っている」というふうに見られてしまったりします。
子犬がビビッて吠えているようなイメージです。
そうすると、こちらの「怯え」を受けて、イヤな人がますますイヤな部分を全力で出してきてこちらに対抗してきてしまうのです。
②自分は「弱者」だから、攻撃してしまう
他人を攻撃してしまう理由って何だと思いますか?
私はこの本を読んで一番衝撃だったのは、この箇所でした。
弱い立場の人が実は攻撃している!?(p40)
人に攻撃的になってしまう時、もしかしたら心の中では「私は弱い人間なんだ」と思っているのかもしれません。
心に余裕がない時など特に周りが羨ましく見えてしまって、「自由な強者」と「不自由な弱者」という構図を自分の中に作り上げてしまっています。
たとえば、電車で足を広げて座っているおじさんがムカつく!となった時、おじさんのことを「自由を得ている強者」だと錯覚し、自分のことは「肩身狭くおじさんに席を譲る不自由な弱者」だと攻撃的になってしまいます。
だけど、相手がどんな人かも分からないのに勝手な憶測やイメージで「相手は強者!」だと勝手に認識して相手を攻撃することによって、今度は自分が「強者」になってしまいます。
誰もが攻撃する側になってしまう恐ろしさ(p42)
そうやって、弱者と強者の終わりなき戦いが続いてしまうのです…。
私はこれをよく恋人と繰り返していましたね。
「私の方が〇〇!」と思っていたけれど、相手はそんな私に責められて弱者になっていたので「お前の方が〇〇じゃ!」という感じで、永遠に仲直りできない深い深い溝が生まれてしまいます。
③「自分らしく生きてほしい」から価値観を押しつけてくるライオンさん
7タイプの動物の中で、一番ハッとさせられたのがライオンさんです。
ライオンタイプの人というのは、「自分は正しい!」と思っていて自分の主張を押しつけてくる人です。
だけど、実はライオンさんが自分の考えを押しつけてくるのは「自分らしく生きてほしい」と願ってくれているからなんです。
人に意見を押しつけられれば押しつけられるほど、「誰がお前の言うこと聞くかー!」と反発したくなりませんか?
子供の頃なんか特に、親から「〇〇しなさい!」と言われれば言われるほど、「私は〇〇したいのに!!」と自分の主張を強くしていきました。
そんな親心を持って応援してくれているのが、なんとライオンさんなのです!
ちなみに、自分もライオンになった経験があるのですが、私が相手に「〇〇してほしい」と伝えてその通りにしてもらうと、罪悪感が湧いてくるんです。
だからと言って自分の意見に反発されるとイラッ!としたりしますが、素直に言うことを聞いてもらっても申し訳ない居た堪れない気持ちが湧いてくるのは、私の中の「あなたの好きなように生きてほしい」という願いなのかもしれませんね。
④「イヤな人」だと思った時点で、相手と脳内で繋がっている
動物の脳には「ミラーニューロン」という注目を向けた相手の脳の真似をするという「鏡の細胞」があります。
緊張している人の隣にいると、自分も緊張するといった経験がないでしょうか?
これと同じで、相手に対して「イヤだな」と思った時点で、相手の脳と繋がって相手の不快感を自分の脳内で真似してしまい、自分もどんどんイヤな人になっていきます。
知らぬ間に相手の不快感を自分のものにしてしまっているので、不快感を拭うどころか考えれば考えるほど相手と繋がってしまって、どんどん不快な感情が増していってしまいます。
相手のことを「イヤな人」だと思った時点で、感情の伝染が起きていることに気づくことができると、自分もイヤな人になってしまうことがなくなります。(p153)
そう、「自分がイヤな人になってきてるなあ」と思った時に、「これはもしかしたら相手から伝染してきてるものかも?」と気づくことで、「自分の感情ではなかった」と気づき本来の自分に戻っていくことができます。
⑤「イヤな人」とは生きる目的が違うのかも
尊敬する人や憧れの人とは同じ「生きる目的」を持っている(p161)
「生きる目的」が共通している人が「好きな人」で、「イヤだな」と思う人は実は自分と「生きる目的」が違うから自分の「生きる目的」を否定されたような気持ちを感じてしまい、自信を失ったり不快感を感じたりしてしまうのかもしれません。
この本で紹介されている7タイプの動物には、それぞれの異なった「生きる目的」があります。
その「生きる目的」が違う人とともにいると「私が合わせなきゃ」と思って自分の「生きる目的」を歪めてしまっていたから、「イヤな人だな」と思ってしまうし、嫌悪感やストレスを感じてしまいます。
合わせなくて良いのです。
「あの人にはあの人の、自分には自分の生き方がある」と気づいて認めるだけで、自分を歪めて合わせなきゃ!という不快感が消えていくはずです。
「イヤだな」と感じる人が周りに多くいるのであれば、本来「生きる目的」が同じである好きな人や憧れの人、尊敬できる人との心の距離を近づけてみると思ってみてください。
感想
最初の章から「痛いとこ突くなあ!」という連続でした。
なぜなら、「イヤな人」をテーマにした本かと思いきや「イヤな人を鏡にして自分の身だしなみを整える」本だからです。(p176より)
そういえば、私は昔の職場で主任に「毎朝、髪の毛をちゃんと梳かしてきなさい」「煙草を吸うなら口臭に気をつけなさい」と注意されたことがあります。
大人になってからこんなことを注意されるなんて、とても恥ずかしくて穴に入りたい気持ちでいっぱいでしたが、この動物の本はまさにその「恥ずかしい部分」をイヤな人を通じて見て自分の心を整えるような本です。
人のことを「イヤだな」と思ってしまう時、同時に自分の中に「そんなことを思ってはいけない!」という気持ちが出て罪悪感を感じます。
人のことを「イヤな人だな」と思えば思うほど、そんなことを思ってしまう自分が醜く汚い存在に思えて「こんな自分じゃ誰にも好かれない!」と恐怖を感じます。
でも、「イヤな他人」というのは、自分の中にあったんです。
元々自分の中にあった「醜くて目を背けたい自分」を他人の中に見ているから、「あの人はムカつく!」だったり「どうしてこちらの気持ちを分かってくれないんだろう」と怒ってしまいます。
ちなみに、自分の不快感を隠して「いい人」を演じれば演じるほど、周りが「イヤな人」になっていきます。(p172)
人間関係にも恒常性があり、人と人とで互いにバランスを取っています。
「普通の人」同士だったらギッタンバッコンしないけれど、幼少期にアタッチメントがなかった人は「不快な感情」に注目してしまいやすく、だからこそ「私はそんなことしない!」と「良い子」になろうとします。
これまた昔の話ですが、とても優しく気遣ってくれる彼氏がいました。
私があーしてほしい!こーしてほしい!と言うと、全部その通りにやってくれるのです。
事細かに指示をしなくても(指示て、仕事か(笑))私が望んでいたものを買ってきてくれるし、とにかく完璧な彼氏でした。
だけど私は、その彼氏が優しくしてくれるほど、どんどんどんどんワガママになって何も満足出来なくなってしまったのです。
望み通り以上のことをやってもらっても、イライラするだけで、そんな自分が「性格悪いなあ」と思っていました。
当時ずっと「私は彼の何にイライラしてるんだろう?」と疑問に思っていたのですが、この本を読んで謎が解けました。
彼が「いい彼氏」を演じれば演じるほど、私はその反対の「イヤな彼女」を演じることになっていたのです。
でも、この本の意味するところはもっとその奥深くにある「否認」の感情だと私は考えています。
「否認」とは、自分が認めたくない醜い部分や弱い部分なのですが、それを読んでいると「ほら!君の顔は本当はこんな顔なんだよ!」とまるで鏡を見ているような気分にさせられます。
そう、「イヤだな」と思っていた人は、本当は弱くて醜くて汚い自分自身の影の姿だったのです。
だから、その「イヤな部分」が自分に「ある」と人に嫌われてしまう!という恐れがあったので、自分の醜い部分に向き合って直す代わりに他人を批判していたのです。
そして、この嫌われてしまう恐れというのは孤独感に繋がっています。
元を深く深く辿っていけば、「どうしてイヤな人にいちいち反応して苦しめられるの?」という答は自分の孤独感が原因だったのです。
嫌いな人にまで「好かれよう!」と努力している自分の姿が見えてくるのではないでしょうか。
そんな自分を責めるのではなく「あなたは今までよく頑張ってきたね!」と自分の今までの努力に感動し、そして「みんなが愛されたい人」だと気づくことで、自分の孤独感が解消されてイヤな人も自分の周りから消えていく。
そんな美しい物語が、この本の中にはあると感じています。
この本の素晴らしさ
読んだ後、イヤな人に遭遇した時に私の頭の中で「イヤな人になってるよ!」とささやく声が聞こえるようになりました。
今までも「自分は性格悪いなあ」と思いつつ、相手を責めたり自分を責めたりして落ち込むことが多かったのですが、この本を読み終わってからは、事を起こす前に「イヤな人になってる!」ときちんと気づいて立ち止まれるようになりました。
きっと、今までは「イヤな自分になってる」と分かっていたけれど、本当の意味で分かっていなかった。
そして、もう1つの問題であった「イヤなことがあったら、親しい人に話を聞いてほしい!」と衝動的になってしまう癖です。
「誰かに聞いてもらわなきゃスッキリしない!」と思う気持ちがいつもあって、でも誰かに聞いてもらったところで問題が何も解決しないことは知っていたのです。
この本を読んでからは、甘えたくなったら「適度な距離感」を思い出すようになりました。
だって、自分が「イヤな人」になってしまうと、相手に「いい人」を演じさせてしまうことを学んだから。
「イヤな人は実はあなたが認めたくないあなた自身」という裏テーマが私の心にはズドンと重く、なんともインパクトのある1冊でした。
それゆえに、本の中で読んださまざまなフレーズが読後ことあるごとに頭の中に浮かんでは消えていきます。
読み終わる前の私は「自分にとって耳が痛いことばかり書かれているから、読み終わったらすべて忘れてしまうんじゃないか?」と思っていました。
なぜなら、嫌な記憶はさっさと忘れて都合の良いことだけを覚えて生きていたいから。
しかし予想に反して、「耳が痛いなあ」と思った言葉こそ、読み終わった後に私の中で何度も何度も響いてくるのです。
それはきっと、中途半端に「イヤな人は自分の鏡」と思ったのではなく、全編を通して読むことであれだけ認めるのが嫌だった自分の性格悪い部分を「それはあなたに適切なアタッチメントがなかったからで、あなたが悪いわけじゃない」というのを本質的に理解ができたからだと思っています。
そう、自分が「イヤな人」になってしまうのは、自分の考え方が悪いとか自分の心の狭さが悪いとか、全部自分の責任にして自分を苦しめていたんです。
でも、自分が「イヤな人」になってしまうのは、自分が「誰からも愛されないかわいそうな弱者」だと思っていて、「みんなは努力しなくても愛されている強者」だと心のどこかで思っていたから。
そうやって「他者に怒っている自分」ではなく「愛されたくて孤独を感じている自分」に気づいた時に、自分の「イヤな人」が消えていって、みんな愛されたい「愛しい人」に変わっていったのです。
この世にはそもそも「イヤな人」なんていなかったのかもしれない。
「イヤな人」は愛されなかった私が作り出した幻想だったのかもしれない。
そして、私の「人生の目的」を思い出すのです。
私は、ドラマ『dele』の真柴祐太郎や『シバトラ』の柴田竹虎のようになりたい!という強い願いがあります。
いや、以前から「優しい人になりたい!」という憧れが強かったのですが、この本を読んでいる内にそんなことを思い出すのです。
「イヤな自分」になるのが「人生の目的」ではないはずです。
また、『アンナチュラル』のミコトのように自分の仕事に誇りを持って仕事をする大人の女になりたいし、『コンフィデンスマンJP』のダー子のように自由に自分の生きたいように生きたい。
これからは、不快な感情ではなく憧れの人と同じ「生きる目的」を探しに人生を再出発させていきたいです。
まとめ
今、毎日の生活の中で「いつも人のことばかり考えていて苦しい」という方には、ぜひ読んでいただきたいです。
そして、もっとオススメしたいのが「私は性格が悪い!」と思っている人。
そんなあなたにこそ読んでほしい。
人のことを「イヤだな」と思うのはいけないことではないのです。
その下にある自分や相手の孤独感に触れることで、きっと本来の美しい自分に戻れるはず。
本来の美しい自分に戻ることで、あなたの周りの世界も美しく輝いて見えるでしょう。
その他オススメ本
『無意識さんの力で無敵に生きる』
「投影同一視」という、自分の醜い部分を相手に投影してしまうお話が書かれています。
「正しいor間違っている」の判断ではなく、「快or不快」で生きるコツや美しさを描かれている優しい本。
『こころのソーシャルディスタンスの守り方』
この本も見たくない心の部分にグサグサ刺さって痛かった本です。
だけど、それだけ自分は人との距離が近すぎてパーソナルスペースを踏みまくっていた…と内省するキッカケになった本です。
「気遣いがすぎる人」「敏感な人」「空気が読めない人」「空気を読みすぎる人」「優しい人」「母親思いの人」と6タイプそれぞれパーソナルスペースを攻撃してくるタイプを解説されています。
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