今回は【イライラ、不安、無気力、トラウマ…負の感情がラクになる「ポリヴェーガル理論」がやさしくわかる本】を紹介させていただきます。
とても良かったです!
どんな本?
2024年4月に日本実業出版社から発売された吉里恒昭さんの本です。
吉里さんはオンラインでスクールもされています。
この本はポリヴェーガル理論初学者向けの本で、かわいいイラストでとても分かりやすく解説されています。
(表紙の赤・青・緑のキャラが登場人物なのですが、すごくかわいくて癒しです)
力んで学ぶ本ではなく、読みながら優しい気持ちに包まれて心のトゲを取ってくれるような読むセラピー本だと思っています。
ポリヴェーガル理論とは、「複数・多重」を表す「ポリ」と、「迷走神経」を意味する「ヴェーガル」であり、日本語では「多重迷走神経理論」と言われています。
簡単に言うと、自律神経を整えると今目の前で起こっている問題も解決する、または問題の見え方が変わって問題が消えていく、というお話です。
自律神経とは、交感神経と副交感神経ですが、ポリヴェーガル理論では交感神経を「赤」、2種類の副交感神経のうち、背側迷走神経複合体を「青」、腹側迷走神経複合体を「緑」とします。
詳しくは本を読んでもらうと丁寧に分かりやすく解説してくださっているので、ここでは簡単に説明させていただきます。
・赤…イライラ、焦り、落ち着かない、力んでる状態、心拍数や呼吸数の上昇など
・青…疲れ、倦怠感、外部をシャットアウトしたい気持ち、動きが鈍い状態など
・緑…ちょうど良い状態、安心感、安全な状態、仲間、癒しなど
なんとなくイメージできるかと思います。
この三色を使って、今の自分がどんな状態にあるのか、相手の状態は何色なのかを「ポリ語」を使って捉えてみること。
そして大事なのは、赤や青の状態が悪いのではなく「赤や青はそのままに、緑を増やす」ということを繰り返し述べられています。
たとえば、締切に追われて焦っている状態を「今、私は締切に追われていて赤の状態になっている」と言い換えてみたり、仕事から帰って疲れて家事ができない時に「私は仕事から帰っていて青の状態になっている」とします。
「ポリ語」を使って脳内で言い換えるだけで、「自分のせいではなく、自律神経の問題なんだ」と気づくことができます。
気づいたらその状態を変えようとせずに、緑(自分にとって安心や安全を感じるもの)を取り入れていく。
ここでは割愛しますが、「ブレンド」という状態もあって、緑赤で遊んだり仕事をしたり、緑青でリラックスして休んだりすると、より効率よく物事に取り組めます。
人生や仕事や人間関係に悩むと、ハウツー本を読んだりしますよね。
だけど、ハウツー本のように問題解決を目的とすると、達成できなかった時に自分を責めてしまします。
なので、ポリヴェーガル理論では問題解決を目指すのではなく、「体のバランスを整える」ことを目的として今の悩みの見え方を変えます。
読もうと思ったキッカケ
前置きが長くなりましたが、この本はFAP講座で紹介されていたので、カウンセリングに活かすために読みました。
思っていた以上に面白くて、すぐ実践できる内容だったので一気に読み終わりました。
大嶋信頼先生のメソッドとも通じるところが多く、ぜひみなさんにも読んでほしいオススメの一冊です。
たとえば、大嶋メソッドで「意識/無意識」や「快・不快コード」がありますが、これはポリヴェーガル理論で言う赤や青の状態に気づいて緑になるという方法と似ていると思います。
大嶋メソッドの「今を生きる」や催眠はマインドフルネスとほぼ同じだと思いますので、この本にもマインドフルになるやり方がたくさん紹介されています。
実際やってみなくても、読んで「あ、そうなんだ!」と気づくだけで、もう緑の状態になっているのだと思います。
心の底から読んで良かったと思った本です。
心に響いた3選
ここを読んでくださる方は大嶋先生が好きな方が大半だと思いますので、大嶋メソッドと絡めてお話していきます。
揺らぎ
「緑」を増やすためには、「揺らぎ」を見たり聞いたり体験するのが有効です。
大嶋先生の「心に聞く」でもこの「揺らぎ」は大切だと言われていましたね。
揺らぎとは、たとえば風に木の葉が揺れる様子や波が浜辺に寄せては返す様子、雲が陰ったり晴れたりする地面の光の様子などです。
つまり、自然界の中で「揺らぎ」は存在します。
悩みが解決しない時やどんどん悩みが深くなっていってこじれている時は「どうにかしなきゃ!」と力が入ってしまっています。
逆に、悩みが一向に解決しなくて「もう頑張れない…」とすべてを投げ出してしまう時、頑張ろうと思っても体に力が入らず倒れたままになってしまいます。
これは赤や青の状態ですが、これらはどちらも大切です。
赤の状態になって緊張している時は、何か自分に生命の危機が迫っているから赤の状態になっているのです。
青の状態になって動けなくなっている時もまた、自分に生命の危機が迫っているから青の状態になっているのです。
両方とも大切な体の信号です。
そして緑は「揺らいでる状態」であり、赤も青も含めて緑赤と緑青を行ったり来たりしているようなイメージです。
これは大嶋メソッドの恒常性と同じではないでしょうか。
どっちかに決めるとかどっちかにいることが正しいのではなく、どっちもあり。
同じ状態を保つのではなく、ブレたら真ん中に戻ると良いのです。
これがマインドフルネスであって、集中が途切れたら中心対象に戻すだけでOK。
ブレるのが悪いわけではない。
自然を見て緑を増やすのも良いですが、「スワイショウ」という中国の健康体操も紹介されています。
これは東洋医学の「上虚下実」という考えが元になっています。
上半身は余分な力を抜いているんだけど、下半身はしっかりと地に足がついている状態です。
しなる竹のようですよね。
スワイショウでは、上下・左右・前後に体を揺らすことで緑の神経を活性化させる効果があるようです。
さらに自然の中の風や川の流れの音、流れる雲、土の手触りといったものって、「いつまでも見ていられるもの」「ずっと聞いていられるもの」ですよね。
これもまた大嶋メソッドの「楽しいことは、ずっとこれが続けば良いのになと思うこと」と通ずるところがあるのではないかと思います。
「緑」は今の安心や安全
なんでイライラして収まらないの?(赤の状態)
なんでずっと寝たきりで体が動かないの?(青の状態)
意識では「こんな状態になっている自分がみっともない」と思って、早く回復させようとします。
だけど、赤や青の状態になっていることにも意味がある。
それは、自分が現在、危機的な状態にいる!と体が判断しているから、反射的に赤や青の状態になっているわけなんです。
つまり、緑が足りない状態というのは、「今」安心できるような状態にいないということ。
戦闘モードになって自分の生命を守るように体が臨戦態勢に入っていたり、逆に身体を動かさないことで自分を守ってくれているんです。
この時に緑を増やして、徐々に怒りや焦りなどの興奮した感情を収めたり、徐々に体を動かしたりするためには「安全な状態だよ~」と体に教えてあげること。
意識ではGOサインを出していても、身体が「まだ準備が整ってないよ!」と言っているんです。
この時に「どんなことをしたら緑が増えるだろう?」と考えるのは、大嶋メソッドの快・不快コードと同じでしょう。
もし寝るのが心地良いと感じたなら、もう十分寝たと意識で思っていたとしても、緑を増やすためにまだ寝ていても良いんです。
「これをするのが正しい」とか「こうあらねばならない」というのは社会で人間として、大人として生きていくには大切なことではあります。
でも、赤ばっかり!青ばっかり!だと、赤と青を行ったり来たりするだけで心がまったく休まらないことが想像できるでしょうか。
なので、緑赤や緑青といった、赤と青に緑をブレンドした状態で「遊びながら楽しんでやる」とか「安心できる状態で休む」という状態にしていきます。
赤はアクセルで青がブレーキだと考えた時、そこに緑を混ぜることで緩やかなアクセルと緩やかなブレーキに変化します。
緑で調整していくわけです。
私はこの考え方の中で特に気に入っているのが、赤や青の状態になっていて緑がまったくない時は、自分は「今」安心や安全を感じていない時なんだ、と気づくことです。
気づいたら、「今」自分が安心や安全を感じることは何だろう?と考えることができます。
「体」と「私」は別物
「体」を自分の所有物だと思っていると、自分の体に鞭を打って無理させてしまします。
念のために伝えますが「自分の体を所有物と見なしてはいけない」と言いたいわけではありません。ただ所有物と見なすと「上下関係」「コントロールする側とされる側の関係」「支配-被支配の関係」が生じやすいとは思います。(p271)
もう本当に仰る通りで、自分の体を私は「所有物」だと思って物扱いをしてきました。
寝る時間や休憩する時間、食べる時間などを削って体をコントロールしようとしてたけれど、上手くいくはずがありません。
我々はロボットではないのです。
体は生き物ではり、私が支配してコントロールするものではないということ。
そして、人それぞれ違った「体」を持って生まれています。
走るのが得意だったり、得意でなかったり。
遠くまで見える視力なのか、そうでないのか。
音に敏感なのか鈍感なのか。
だからこそ、自分や相手の体が今どんな状態であるのかを「ポリ語」を使って認識することで、問題の見え方が変わってくる可能性があります。
私の「体」は私が想像している以上に変化をしていて、だからこそ「私」と「私の体」は別物と考えてみる。
この本の中では、私と体の関係を「運転手」と「車」とたとえていてとても分かりやすいです。
体が赤になっている人を理解するには、「ちょっとアクセルを踏んだだけでスピードが出てしまう車」「ブレーキを踏んでもなかなか急には止まらない車」に乗っている運転手の気持ちを想像するといいかもしれません。(p275)
このように考えてみた時、自分が思っている通りに動かない体も「あの人なんでああなんだろう」と思ってしまう気持ちもやわらいでいくのではないでしょうか。
ポリヴェーガル理論の本を読んで変化した自分
大嶋メソッドで長年学んできて、催眠や無意識を活用して自分らしく生きる方法を実践してきました。
それを今回、新たな言語と自律神経の働きで学び直した感覚です。
ポリヴェーガル理論は「赤と青はそのままに。緑を活かした生活を」がキーワードです。
みなさんは、好きなものから食べる派ですか?嫌いなものから食べる派ですか?
私は嫌いなものから食べようとするんだけど億劫になってしまって、なかなか手がつけられなくて先延ばししてしまうタイプでした。
それに気づいてからは好きなことからやって、その勢いでやりたくないことをやるといった生活に変えていたのですが、これで良いのかなと思うところもありました。
「赤の状態で仕事をする!」となると必ず後に青の状態になってバタンキューしてしまいますし、そもそも真っ赤になるのがしんどいことだと知っているので、赤になりたくなくてだらだらとしたくないことを続けてしまったりしてしまいます。
だけど、緑をブレンドすることで効率良く何事もできるようになるので、安心で充電できた状態で仕事に挑むと緑赤になって意欲を持って物事に挑めることを知りました。
「緑」と言われるとなんだか抵抗なく腑に落ちるのは、どこか自分とは違う生き物として客観視できるからだと思います。
鈴木祐さんの【無(最高の状態)】にも書いてありましたが、「自分ごと」として問題を捉えてしまうと自分にダメ出しをしてしまって「もう!なんでできないの!」と責めてしまいます。
そうではなくて、自分や他人をコントロールせず「まず体を整える」ことが何よりも大事であるポリヴェーガル理論は、自己啓発なんかでよく言われている「自分を大切にする」を具体的に教えてくれる理論なのではないかとも思います。
「ホームとアウェー」という考え方もとても分かりやすいです。
なぜ赤の状態になっているのかというと、アウェーのところにいるから体が「危険!」だと反射的に反応しているわけです。
そこには何かしら意味があってイライラしたり、動けなくなったりしているわけなんです。
そして赤や青の状態になることは、生きていく上で必要なことなのです。
さらに緑は人から人へ伝染していきます。
ミラーニューロンと同じで、イライラしている赤の人と関わっていると自分までイライラしてきますよね。
落ち込んでいる青の人と話すと、自分もなんだか落ち込んだ気分になったりします。
これは赤や青が伝染していっているのですが、逆に信頼できる人や仲間と一緒に緑の活動をすることで緑を増やしていくことができます。
相互に緑を増やしていくことこそが、ポリヴェーガル理論の目指すところなのではないでしょうか。
これを踏まえて、私が今行っている講座や読書会もみなさんの緑を増やす助けになっていればなあと改めて決意を固めた次第です。
まとめ
これでもかってくらい簡単に分かりやすく説明されているポリヴェーガル理論の本、オススメです。
ポリヴェーガル理論をまったく知らなかった方にこそ読んでほしいです。
読んですぐに日常に活かせますし、「ポリ語日記」も面白いと思います。
(ポリ語で日記を書くだけです)
自分や相手を責めても何にもならないとはよく言いますが、無理に自分を叱って奮い立たせようとするのではなく、まずは体のコンディションを整えること。
これだけで今、自分の目の前にある問題が違って見えるのは、赤や青の状態だと視野が狭くなって見えるものも見えなくなっているかもしれないからです。
👇こんな人にオススメ
・仕事や対人関係で常に緊張していて辛い。
・疲れがまったく取れなくて休みたい。
・怒りたくないのに、すぐに怒ってしまう。
・自分は弱い人間で強くなりたいと思っている。
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