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不快な人や物事に飲まれずに、淡々と過ごせるスクリプト

催眠スクリプト
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「自分は、仕事で少しでも嫌なことがあると夜眠れなくなって、次の日に会社に行くのが怖くなるんです」と仰った人がいました。
その方は仕事以外でも、たとえばある人に言われた一言が引っ掛かって怒りを感じたり、急に不安になったりして、頭では「そんなことに囚われなくても、好きなことをして過ごせばいいじゃない」と分かっているんだけど…と相談しに来られたのです。

その人の気持ちが私にはすごくよく分かるので、うんうんとうなずきながら、「あるところにね…」と1つの物語をお話したのです。

そう、あるところに、昔ながらの縁側と、風鈴と、小さいお庭がありました。

しかし、その家に人が住んでいたのももう何年も前になるので、今では夏が来るたびに誰もいない縁側の風鈴がチリンチリンと涼し気な音を立てるだけなのです。

そして、その風鈴はまるで昨日磨かれたばかりのようにガラスが透き通っていて、チリンチリンと音が鳴る部分が金魚の形をしていて、とても私の好みだなあなんて思うのです。

なぜ、私がこの誰も住んでいない家の縁側にいるのかというと、そこが私の秘密基地で、縁側から見える空をゆっくりと白い雲が流れていく風景が、創作で疲れた私の頭を癒してくれるのです。

そうなんです、実は私は小説家で、ネタにつまった時や頭をリフレッシュしたい時にここを訪れて、庭の外からは風の音以外何も聞こえないこの場所でぼーっと半日過ごすのです。

そうやって風がお庭の塀を叩く音と風鈴の涼し気な音をぼんやり聞きながら、私はいつもあの日のことを思い出すのです。

そして、それは小学生だった頃、家にあった本の中に光り輝く大きな鳥が出てきて、その鳥は何度も何度もよみがえって、違う時代を生きていくというお話で、その時の私がどういう思いでその本を繰り返し繰り返し読んでいたのかは思い出せないんだけれど、大人になった今の私の心に、あの光る大きな鳥の姿は何度でも何度でも蘇ってくるのです。

やがて、私はあの不死鳥のように、生きられたらなあと思ったのか思わなかったのか、あの光る鳥の姿が心の中に見えてきた時に、私の心はぽっとあたたかく灯るのです。

でも、私はその灯った光を信じられなくて、目を閉じても聞こえる大きな羽の音にも耳を塞いで、自分の足音を一生懸命に聞こうと、爪先をじっと眺めていたのです。

そうしていると、足元がどんどん暗く固いアスファルトに染まっていってヒビ割れるから、私は思わず耳から手を離したのですが、手を離した表紙にぐらっと体制を崩したものだから、パカッと開いたアスファルトのヒビ割れの中にポーンと落ちていってしまって、天も地も分からないあの感覚が私の全身を駆け巡っていきました。

その時に、私は小さく「あっ!」と声をあげたのですが、私の小さな声など底が見えない深い穴の中ではかき消されてしまって、耳元を落ちていく轟音が聞こえるだけで、私は成す術もなく落ちていく景色を眺めるだけで精一杯なのです。

そうやって、ほんの少し手足をバタつかせながら、何にも引っ掛かることなく落ちていく間に、落ちてきた上の穴から何か聞こえないかなと耳を澄ませてみたり、落ちていく下の方から人の気配がしないかなと耳を傾けてみます。

けれど、上からも下からも何も聞こえてこないので、「ああ、いつまで落ちるのだろう…」とあの感情が過った時に、ぱあっと目の前が明るくなったので、心の中で一気に込み上げてくるものを感じました。

そして、一瞬の間にコロコロと変わる感情に揺れながら、それはまるで私の目の前の景色がものすごいスピードで変化していく風景のようで、「これはまるで車に乗っている時のようだ」と思ったりもします。

そこで、あの胸に宿る不死鳥の光を思い出して、この穴の底の暗闇を照らすことができないだろうかと考えたりもして、でも私が落ちていく風速で起きる轟音ですべてがかき消されていくようで、ただただ耳元の風の音を聞いているしかないのです。

なぜ、私の胸の中にはあの不死鳥の光がまだ宿っているのに、私はその光を信じることができないのだろう?とそう思った時に、その不死鳥は私の胸を飛び出て、落ちていく私の目の前で光る大きな羽をゆっくりと羽ばたかせるので、それを見た私は急に心が安らいだ気がして、それまでは落ちていく穴の壁を一生懸命眺めていたのだけれど、やわらかく瞼をそっと閉じたのです。

そうやって目を閉じても、瞼がほんのり明るくあたたかく感じるのは、不死鳥があたたかいからなのかそうでないのか、私には分からないけれど、不死鳥が落ちていく私の頭の位置で羽ばたいているから、あの轟音が聞こえなくなったからなのかもしれません。

それから、不死鳥の不思議な力で、ものすごいスピードで落ちていっていた私は、地面につく直前にふわっと浮いて、そしてゆっくりと地面に着地したので、まるで地面がふわふわのクッションのようで、私の中の暗くて濁った気持ちもすべてふわふわとやわらかいものに変わっていったのです。

すると、私がやわらかい地面に立って、しばらく経つと地面が元の固さに戻っていって、それを確認した不死鳥は、私が落ちてきた穴の入り口へ舞い戻っていくようで、キラキラと尾から光を巻き散らしていく様子を、私は花火を眺めるような気持ちで見届けていました。

やがて不死鳥が遠くへ上っていって小さな点になって消えていった時に、穴の底の洞窟でぴちょんと1つ雫が落ちる音がしたので、今度はその音のする方へ歩いていくことにしたのです。

そして、もう1つぴちょんと音がして、その音は「もう雫が落ちて来ないかもしれない」と思った時に、思い出したようにぴちょんとなるので、次にまた音がするまでにかなり雫が落ちてくる場所に近づけたんじゃないかと思って、あたりをきょろきょろと探してみます。

そんな時に、その雫が滴っていた場所は、あの私の胸の中にあった不死鳥の石像が祀られている場所だったんだ、と気づいたのです。

それから、雫が落ちる向こう側に見える等身大の不死鳥の銅像にそっと指先を触れてみると、ひんやりと冷たい感触があって、また私の背後でぴちょんと1つ、雫が落ちる音がしました。

そして、先ほど目の前にいたあたたかい光を放っていた不死鳥とは反対に、冷たくてひんやりとした石像にぐっと胸を寄せて抱きしめると、その冷たさがとても心地良いもので、私の頬が石像と同じ温度に冷たく落ち着いていくのです。

 

ひとつ、爽やかな空気が頭に流れてきます。
ふたつ、身体がだんだんと軽くなってきます。
みっつ、大きく深呼吸をして頭がすっきりと目覚めます。

―――

前回書いたスクリプトに似ていますが、心に聞いたら「これを書く」と言われたので書きました。

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