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『障子にうつる紅葉の影』

催眠スクリプト
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ある夕暮れに、障子の向こうにハラハラと舞い落ちる紅葉の影が見えるのです。

そうすると、今にも紅葉が枝から落ちる音が聞こえてくるようで、私はその障子にうつる影に釘づけになるのです。

なんて美しい光景なんだろうと、影しか見えないけれど、障子の向こう側に広がる世界を想像して、うっとりとするのです。

その障子には、紅葉の他に、ある女性の横向きの姿が影になってうつっています。

その女性は障子の向こうで機織り機で何か作業をしいるのか、一定のリズムが聞こえてきていて、それに合わせて女性の首も前へ後ろへと揺れるのです。

私が今、この障子を眺めているのは私の部屋からであり、私はとても病弱なので、万年布団の中からこの障子を眺めては、影絵のような外の移り変わる季節にさまざまな思いを馳せるのです。

そうすることによって、春は庭に出てさまざま花に囲まれて花の香をかぐところを想像したり、夏は青い草たちに囲まれて犬と駆け回る自分を想像したり、また冬には雪の積もる庭で雪だるまを作ることを想像したり…そうやって、毎日毎日、障子にうつる影を眺めながら、外の風景を想像するのです。

時折、外から聞こえてくる音は私にとってはとても新鮮なもので、私の部屋には私の布団しか敷いてないものだから、自分の寝返りを打つ音しか聞こえないのです。

だけど、障子にうつるもみじのハラハラと一枚一枚が落ちていく様子は、私にとっては近くにあるのに、手が届かない存在なのです。

すぐそこまで歩いて行って、障子を開ければ縁側があって、その向こうに広い庭があり紅葉の木がある。

だけど、私にとっては自分の吸ったり吐いたりの呼吸の音を聞くことしかできなくて、もう何年も自分が歩く足音なんか聞いた覚えがなのです。

私は自分で自分の体のどこが悪いのかを知らないのですが、物心ついた時から車椅子で移動をしていて、今では出歩くこともなくなったから、この部屋にある羽毛布団がもう私の体の一部のようになっていて、私はここから出て歩くことになるのはもうないのではないかと思っている。

そんなことをぼんやりと天井を眺めながら考えている。

天井の梁の数を数えながら、しーんとした部屋の中で、時計の音がチッ…チッ…チ…と秒針を刻んでいる。

天井には四角くて、障子と同じ素材でできた電気がぶら下がっていて、これはとても私のお気に入りなので、いくら眺めていても飽きない。

私はこうやって、何百回何前回と障子と天井を交互に眺めながら、障子の向こうが朝の光から昼過ぎのおだやかな光になり、やがて夕暮れの色に染まった後、夜になる様子を確認していくのです。

雪が降れば音もなくしんしんと降り積もるその音が美しくて、夏の蝉の声がまた懐かしくて、私はそれらを想像するだけでとても幸せな気持ちになって、毎晩眠りにつくのです。

ふかふかの羽毛布団にくるまったまま、季節を布団の中で過ごして、太陽が出て昇って沈むまでを肌で感じる。

私はある日、夢の中で白馬に乗って虹を渡る夢を見たんだ。

だけど、それは私ではなく王子様だったから、私よりも声が低くて、私はビックリしたんだっけ。

私は、白馬の背にまたがりながら、白馬のふかふかの毛並みを太ももに感じて、そして手綱を引くのです。

そうすると、今こうやって布団の中から一歩も出れない私じゃなくて、白馬に乗ってどんどん遠くへ旅立っていろんな国を見て、いろんな人に会って、そして豪快に笑う自分もいるんじゃないかと、夢の中で想像するのです。

私には、何か特技があるわけではないし、目標があるわけではないけれど、いろんな人の話を聞いてたくさんの人とともに笑って同じ時間を過ごすことに、そこに意味があるんじゃないかと思うんです。

だから、これから白馬に乗って出会った人との思い出を私は一生忘れないだろうし、あの日あの時に白馬に跨って初めて渡った虹の上がって下がるあの急な坂道をとても懐かしく思うのです。

私はこの布団から出たいとは思わないけれど、でも、いろんな人とは会ってみたいと思うから、だからいつか出会うその人のために、私は今日も障子の向こうに見える影を頭の中に、その映像を残しておくんです。

私の何気ない日常が誰かの特別になる日が来るのだろうかと、私が、私の声と私の言葉で、私の物語を話した時に、誰かが興味深く聞いてくれるのだろうかと。

そんなことを思い馳せながら、胸を高鳴らせて今日も眠りにつくのです。


ひとーつ!爽やかな風が頭に流れてきます!
ふたーつ!だんだん頭が軽ーくなっていきます!
みっつで、大きく深呼吸して、頭がスッキリと目覚めます。

――――――
大嶋信頼先生の「見て、聞いて、感じて」の手法で催眠スクリプトを書きました。
「外見を美しくしたい人のためのスクリプト」です。

これはまた、大嶋先生の呪文講座で習った方法でタイトルを作りました。
それが『障子にうつる紅葉の影』です。

簡単な解釈は、美しいものが影だけで実態がないもの。
ハッキリしないもの、具体的にそのものが見えないから美しい。

影、というメタファーはいろんな意味で捉えられますね。
もしかしたら自分の中の光と影を投影しているのかもしれないし、
(光があれば影がある、というように)
影は心の中に浮かぶ面影かもしれないし、
本体に付き添って離れないものなのかもしれない。

影は自分自身であり、自分はその影を見ながら何を考えるのか?
何を感じるのか?

紅葉の花言葉の中にも、「大切な思い出」と過去を連想させるようなものがあります。

障子とは、視線や風、光などからさえぎるものです。

ここらへんから、なんだか大事な過去の記憶が思い起こされるようなそんな感覚があります。

――――――
大嶋先生の催眠の書き方の参考になる本はこちら。
『無意識さん、催眠を教えて』


大嶋先生初の、催眠の手法で書かれた小説。
『催眠ガール』

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