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有意義な毎日を送りたいけど、自分にとって意味のあることないことの違いが分からない人へのスクリプト

催眠スクリプト
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「私はこの短い人生の中で、毎日意味のあることだけをしたい!」とある女性が仰っていました。

その女性は、ある時に大きな太い桜の木の幹の樹皮を下から上へと眺めていました。

そして、女性が眺めていた桜の木の樹皮はかなりの年月が経っているようで、表面がパリパリと反り返って幹から浮いてしまいそうになっていたのですが、それを指で剥がしたい衝動を抑えながら、じ…っと木の幹の皮目を眺めていると、背後からホームランを打ったスカッとする金属音が聞こえてきました。

すると、その音と同時にいろんな怒声なのか声援なのかが入り混じってわー!わー!と騒がしくなって、私の背後の風も少し強く背中を打つようなのです。

けれど、私は何に負けたくないのか「絶対に振り返ってやるもんか!」と思っていて、どんな歓声や音が聞こえてきたとしても決して振り向くまいと、桜の木の幹に意識を集中させるのです。

そうやって、私の年齢よりも遥かに長生きをしているであろう太い幹としわがれた表皮を眺めていると、私なんかまだまだツヤツヤのお肌なんじゃないかと思えてくるから、私の背後の少年たちの声が今度また大きな歓声を上げたら、次は振り向いて何が起こっているのか確認してみようかな、とちょっと思ったんです。

しかし、「振り向いてやろうじゃないの」とせっかくちょっと前向きに考えてみたのに、そういう時に限ってあの歓声がなかなか上がらず、今私に聞こえてくるのは桜の木の若葉が風にざわざわと揺れる音と、背後でグラウンドの砂がジャリジャリと風に吹かれる音だけで、私はあの歓声が上がるのを今か今かと拳を握り締めながら待っているのです。

そして、いつでも振り向けるように足首に力を入れて待っているのですが、「あれ?もしかして、もう少年たちは野球をやめて帰ってしまったのかな?」とあの感情が心の中で首をもたげてくるのですが、「いや、あの歓声が上がるまで私は何があっても振り向かない!」と決めていたので、私は桜の木の若葉が一枚一枚微妙に違う若葉色をしている様子を「待っていませんよ」という顔をしながら数えてみます。

だけど、いくら待ってもあの声は背後から聞こえてこなくて、なんなら人の声も誰かがグラウンドを走る音も聞こえなくなってしまって、そろそろ私は自分の背後で何が起こっているのかをこの目で見て確認したくなっているのですが、今振り向くとなんだかやっぱり負けたような気がしてしまうので、ただひたすら桜の木の若葉が風に吹かれるざわめきや、その向こうにあるフェンスを越えたところを走っている車やトラックの音に耳を傾けています。

そうやって、どれぐらい身じろぎもせずに立っていたのか私には分かりませんが、空が少し陰ってグラウンドに影が広がり、さっきまでよりも少しだけ空気が涼しくなりました。

だけど、そんなことで私は私が決めた決まり事を変えてはいけないと思っているので、ひたすらあの歓声が上がるのを待っているのだけれど、日が陰ったグラウンドにはまるで私と桜の木しかいないような静けさが漂っていて、私は空を仰ぎ見ると、そこには灰色の分厚い雲が私の頭上を通過しようとしているところでした。

なので、「もしかしたら、雨が降るのかな?」と思ったりもしたのですが、でも雨のにおいがする気配はなく、ただ少し体感温度が下がったことに私は喜び、そして近くで鳥の囀りが聞こえたことに気づきました。

そして、その声はどこから聞こえたんだろうと声の主を探そうと思って、「もう1回鳴いてくれないかな」と息をひそめて待っているのですが、そこにはいろんな大きさの若葉が風で擦れ合う音が重なって聞こえるだけで、ひらひらと落ちてきた一枚の葉っぱが私の鼻先をかすめていきます。

すると、突風に飛ばされてきた白と黒のストライブ柄の野球帽がいきなり私の目の前に転がり出てきて、思わず私は野球帽を拾おうと手を伸ばしかけたのですが、キャップはさらに強い風で勢いよく転がされていってしまって、「あ」という間に太い桜の木の幹の向こうの陰へ小さくなっていきました。

けれど、なんとなく私はこの場所を一歩も動きたくないなと思ったので、この場所から届く範囲にないものはまあいいかと思って、風に飛ばされる野球帽を目で追いかけるだけで、本当に良いのだろうかとあの感情がまた頭をもたげてきたのだけれど、やっぱり私の足は「ここを動きたくない」と言っているので、両手を広げられる範囲以上のものはどうしようもないと思って、ただ桜の木の若葉のざわめきを頭上に聞くのです。

そうやって、私は「届かない」と思って諦めてきたことがたくさんあるのだけれど、でも届くものばかりを手に入れてきたのかというとそうではなくって、なぜならその時は手が「これじゃない」と言っていたり、目が「あっちのものを見てみたい」と言ったりするので、私はその中で手や足や耳の声を聞きながら、その時に一番しっくりくる感触のものに触るようにしているのです。

やがて、桜の若葉が夜の闇と同じ色に染まった頃、私は暗くなってもう誰も私の姿をはっきりと認識することができないだろうと思ったので、くるりと180度振り返って、野球少年たちが試合をしていたであろうグラウンドを横切って、小学校の正門を後にしたんです。

それから、どこへ行こうかとかどうやって帰ったとかは正直覚えていないのですが、小学校の前にある歩道橋を上ったことだけは覚えていて、その歩道橋の真ん中で立ち止まって今日の夜の月の形と色を確かめると、歩道橋の下を通る車の音が近づいて遠ざかっていく音を楽しみます。

そして、こんなにゆったりとした夜を過ごせるのは、私が何もしていないからで、何もすることがないからこうやってぶらぶらとムダに時間を食っているのだけれど、それがあの月に気づかせてくれたり、夏の夜のじっとりと湿っぽい空気のなつかしさを思い出させてくれたり、来年もまたこんな夏を過ごしたいと思わせたりするのかもしれないなあと考えたり、それを忘れたりするのです。

 

ひとつ、爽やかな空気が頭に流れていきます。
ふたつ、身体がだんだんと軽くなっていきます。
みっつ、大きく深呼吸をして頭がすっきりと目覚めます。

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