山の斜面は、さまざまな茶色のグラデーションで、美しい水玉模様が出来上がっています。
自分のすぐ近くにある木からハラリと木の葉が落ちてきて、「ああ、そろそろ木が枯れていく頃だなあ」と冬を迎える準備に入っていることに気づきます。
ビニールハウスの中は、あんなにも若々しい緑でいっぱいなのに、一歩外に出れば、こんなに落ち着いているんだなあ、と先程までいた世界と対比をしてみて、少し驚きます。
地面はカラカラと枯れていて、ひび割れています。
それが寂しいというわけではなく、むしろ大地の力強さを感じます。
歩くと乾いた土の音や、小石を蹴った音がして、もっと足音を鳴らしたくなってきます。
足の裏の感触は先程までとは違い、かたくて小石を踏んだことがハッキリ感じ取れます。
「地に足が着いているとは、このように足の裏の感触がしっかりと感じられることなんだなあ」と、真っ直ぐ立っている自分を意識しながら思いました。
春もいいけど、秋もいい。
手に持った鍬を杖替わりに、目の前の枯れた茶色い木を見あげます。
またひとつ、残り少ない葉っぱが風に揺らされて落ちそうになっています。
なんて感慨深いのだろう。
そう考えながら、自分の白くてフサフサした髭を、鍬を持っていない方の手で撫でるのです。
乾いた大地を、とても懐かしく思います。
いつしか自分も年老いて、髪も髭も真っ白になったけど、まだ背筋はピンとしてるし、土地を耕すこともできる。
白い作業服は、そんなに汚れておらず、それは長年の作業が手慣れてきて、汚すことが少なくなってきたからである。
誇らしく思うのです。
一通り、乾いた風景と鳥や虫の声を聞いて、さて、またビニールハウスの中の苺を収穫しに行こう、と姿勢を正します。
苺を収穫して、誰かに売ったりするわけではありません。
まだ、この苺の行先は決まっていないのです。
ただ、育ったから収穫しているだけなのです。
ハッキリしているのは、自分はこの苺を食べないだろうということです。
何も、不味いからとかではなく、味には自信があります。
ひとつひとつ丁寧に、プチッと苺を摘んでいきます。
まだまだバスケットにいっぱいにはなりません。
でも、このビニールハウスの中の緑は立派だけど、そんなに実がなっていないと思うのです。
緑ばかり立派になってしまって、実をつけるのを忘れてしまったのではないだろうか。
そんなことを考えながら、もう摘み残しはないかと、緑の合間を手でかき分けながら、苺の実を熱心に探すのです。
宇宙服の主張が激し過ぎる…!スクリプトを書いていた時の自分のイメージは、もっと芋っぽい感じでした。
なんかスタイリッシュに仕上がりました。
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