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【過去作】どうして振り向いてくれないのだろう?

催眠スクリプト
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2019年8月30日に書いた催眠スクリプトです。
ビニールハウスに苺が成っています。
赤くて大きな苺です。
ゴツゴツとしていて、表面の粒もしっかりついています。
ガサガサッと蔓を掻き分けて、さらに成っている苺を積んでいきます。
今年は豊作とまでは言わなくても、一粒ひと粒の出来がとても良い。
ちょっと歪に四角形っぽかったりするけれども、そこもまた愛嬌です。
自分で育てたものは、なんてかわいいんだろう。
パクッと一口食べてしまいたいのを堪えて、左腕に下げているバスケットにサクサクと収穫していきます。
半透明のビニールの手袋が、カサカサッと擦れる音が聞こえます。
ビニールハウスの中はサウナのように暑くて、土を踏みしめる度にやわらかい感触が伝わってきます。
土壌はとても発色がよく、濃い珈琲色のような香ばしい色をしています。
その土の上に、いくつもの支柱に支えられたこれまた濃い緑色の蔓と葉っぱが巻きついて生い茂っています。
苺を収穫するたびに、蔓全体がワサワサと揺れて「あ、今、生きてるんだ。」という生命力を感じます。
まだ白い花が咲いていたりもします。
この花は、ちゃんと苺になるのだろうか?
そっと花びらを手に取り、眺めます。
ビニールハウスの外から、飛行機がゴーッと飛んでいる音が聞こえてきて、青空の真ん中を堂々と横切っていく姿を想像できます。
飛行機雲は出来ているのだろうか。
そんなことを思いながら、ビニールハウスの中で黙々と苺を収穫する作業を続けます。
このビニールハウスには今、自分一人しかいません。
土をギュッギュッと踏む足音と、自分の動きにあわせて蔓が擦れる音だけが空間を満たしています。
白い宇宙服のような防護服で作業をしているので暑くて、背中に汗がツーっと垂れる感覚を感じられます。
腕で額の汗を拭って顔をあげると、一面に整列させられた緑の蔓が確認できます。
そろそろ息が切れてきたかもしれない。
かけていたゴーグルを額に上げて、息を整えます。
そんなに重労働とは思っていないはずなのに、ずっと同じ姿勢で収穫していたのでちょっと疲れるのが早かったのかもしれない。
改めてビニールハウスの中を見渡して、自分が一年かけて育ててきた立派な苺の蔓を誇らしげに思います。
実がなるかよりも、この若々しくて強くしなる鞭のような葉や茎が、自分の努力を象徴しているような気がするのです。
息が整ってきたところで、外の空気を吸いたくなったので、一度ビニールハウスの外に出ることにしました。
もうすっかり秋になってきたようで、ビニールハウスを出た瞬間に、少しひんやりとした澄んだ空気を肌に感じました。
ビニールハウスの中とは違って、視界には茶色い土や紅葉した葉っぱが飛び込んできます。
チチチチ、と鳥や虫が鳴く声があちこちから聞こえてきて、ビニールハウスの中からは感じられなかった自然との一体感を感じられます。
遠くには橙色や赤茶色に紅葉した山が二つ見えます。
あの山には行ったことがないけれど、ここと似たような場所なんだろうか。

山の斜面は、さまざまな茶色のグラデーションで、美しい水玉模様が出来上がっています。

自分のすぐ近くにある木からハラリと木の葉が落ちてきて、「ああ、そろそろ木が枯れていく頃だなあ」と冬を迎える準備に入っていることに気づきます。
ビニールハウスの中は、あんなにも若々しい緑でいっぱいなのに、一歩外に出れば、こんなに落ち着いているんだなあ、と先程までいた世界と対比をしてみて、少し驚きます。
地面はカラカラと枯れていて、ひび割れています。
それが寂しいというわけではなく、むしろ大地の力強さを感じます。
歩くと乾いた土の音や、小石を蹴った音がして、もっと足音を鳴らしたくなってきます。
足の裏の感触は先程までとは違い、かたくて小石を踏んだことがハッキリ感じ取れます。
「地に足が着いているとは、このように足の裏の感触がしっかりと感じられることなんだなあ」と、真っ直ぐ立っている自分を意識しながら思いました。
春もいいけど、秋もいい。
手に持った鍬を杖替わりに、目の前の枯れた茶色い木を見あげます。
またひとつ、残り少ない葉っぱが風に揺らされて落ちそうになっています。
なんて感慨深いのだろう。
そう考えながら、自分の白くてフサフサした髭を、鍬を持っていない方の手で撫でるのです。
乾いた大地を、とても懐かしく思います。
いつしか自分も年老いて、髪も髭も真っ白になったけど、まだ背筋はピンとしてるし、土地を耕すこともできる。
白い作業服は、そんなに汚れておらず、それは長年の作業が手慣れてきて、汚すことが少なくなってきたからである。
誇らしく思うのです。
一通り、乾いた風景と鳥や虫の声を聞いて、さて、またビニールハウスの中の苺を収穫しに行こう、と姿勢を正します。

苺を収穫して、誰かに売ったりするわけではありません。
まだ、この苺の行先は決まっていないのです。
ただ、育ったから収穫しているだけなのです。
ハッキリしているのは、自分はこの苺を食べないだろうということです。
何も、不味いからとかではなく、味には自信があります。
ひとつひとつ丁寧に、プチッと苺を摘んでいきます。
まだまだバスケットにいっぱいにはなりません。
でも、このビニールハウスの中の緑は立派だけど、そんなに実がなっていないと思うのです。
緑ばかり立派になってしまって、実をつけるのを忘れてしまったのではないだろうか。
そんなことを考えながら、もう摘み残しはないかと、緑の合間を手でかき分けながら、苺の実を熱心に探すのです。

以下、AIが描いたスクリプトイラストです。
宇宙服の主張が激し過ぎる…!スクリプトを書いていた時の自分のイメージは、もっと芋っぽい感じでした。
なんかスタイリッシュに仕上がりました。

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