今回は、大嶋信頼先生の『あなたを疲れさせるあの人を「どうでもいいや」と思える本』のレビューを書いていきます!
この本は、2020年4月に発売された『いつも人のことばかり考えて凹んでしまうあなたが「ま、いっか」と思える本』に加筆・修正された本で、文庫化にあたってタイトルも変更されました。
何度読んでも毎回新鮮な気づきがあるのが、大嶋先生の本です。
催眠スクリプトの手法を基盤に書かれているので、読んでいる間眠くなったりしますが、まさに「読むセラピー」!
以下のような悩みを持っている人には、ぜひオススメしたい一冊です。
・人に対して怒りがわくけれど、人間関係を切れないし離れられなくて辛い。
・いつも自分ばかり損しているような気がする。
・誰を信じれば良いのか分からない。
・友達と呼べる人がいない。
・人はみんな私のことを傷つけてくる。
・他人との距離感が分からなくて、人に近づくと嫌なことをされてしまうし、仲間に入れない。
どんな本?簡単な内容紹介
最初から最後まで一貫して書かれているのが「人との距離感を適切に保つ」ことです。
人との距離感が近すぎると「こんな嫌なことが起きるよ~!」「だから、こういうケースはこう対処してね!」と様々な状況や人間関係のケースが紹介されています。
特に大きく分けて6つの「心を疲れさせて振り回してくるタイプ」について、詳しく書かれています。
図々しい人、ハラスメントしてくる人、マウンティングしてくる人、愚痴っぽくて悩んでいる人、落ち込んで苦しんでいる人、ひとりぼっちで孤独な人です。
実はこれらの自分を困らせてくる人と、なぜ適切な距離感を保てないのか?という大元は、だいたいが幼少期の親子関係にあります。
たとえば、小さい頃に母親の愚痴ばっかり聞かされていたとか、家族に下品な人がいるとか、母親がいつもしんどそうだった…などです。
そうすると、過去の家族関係の心の傷を現在の人間関係に重ねて見てしまって、他人なのに他人と思えず「家族だからなんとかしなきゃ!」と無意識に思ってしまっているのです。
他人なのに家族だと思ってしまっているから、他人との距離感を保てずに家族の距離感になってしまい、どんどんどんどん近づいていって嫌な目に遭ってしまう…。
この本では、そうやって家族の呪縛に自覚はないけれど苦しめられている人が、もうこれ以上人間関係で傷つかない方法を心理学の手法を含めてあらゆる角度から紹介されています。
最終的には「自己中に生きること」の美しさの話になります。
体に良い食べ物を食べると元気になれるように、体に良い人間関係を築くことで、自分が元気になっていきます。
レビューを書こうと思ったきっかけ
「ま、いっか」の本が最初に発売されてから3年経ちました。
当時の私は人間関係で不快な思いをすることが多く、とても怒りが溜まっていて不快な気分が解消されない毎日を送っていました。
今回改めて文庫化された本書を読んで、「やっぱりすごい本だ!」と思った理由が3つあります。
ひとつ目は、前回「ま、いっか」の本を読み終わった時もそうだったのですが、「体に良い食べ物を食べるようになった」です!
仕事が忙しくて適当な食事をしていたし、人間関係で嫌なことがあるとお菓子をドカ食いする癖が私にはありました。
(遺伝子コードだとGABRG2が効く症状です)
別にこの本を読んで食生活を改善したい!と思っていたわけではなく、「マウンティングしてくる人がとにかく腹立つ!」と思っていて、マウントを取ってくる人の対処方法が知りたい!と思ったのが一番大きなキッカケでした。
だけど、なぜか食生活が改善されました(笑)
2つ目は、すでに上で書きましたが、「マウンティングしてくる人の対処法が知りたい!」です。
私が何かをするたびに口出ししてくる人、わざわざ意見を言ってきて自分アピールしてくる人…そんな人たちに辟易していました。
マジで黙ってほしい…だけど、どこに行ってもわりと高確率でマウンティングっぽい発言をされることが多いので、そのたびに頭の中でグルグルグルグル延々とその人のことを考えるムダ時間を減らしたかったのです。
3つ目は、とにかく私は傷つきやすい人間なので、他人の言動にいちいち傷つかない方法が知りたい!と思ったのがこの本を読もうと思ったキッカケであり、ちゃんと「なぜ傷つくのか?」という理由と対処法が納得する形で紹介されています。
(ちなみに私は3年前はビッグファイブの性格特性の神経症的傾向が非常に高く、現在は1ポイント下がった状態です)
本書の魅力、心に響いたフレーズ紹介!
「どうでもいいや」の本の中で、特に自分に響いたフレーズを5つ紹介します!
他人を意識しすぎると、自分の中心がどんどんぶれていく(p49)
大嶋先生の合気道の先生の言葉が、私にもとても響きました。
本来、「両腕を広げて届く範囲に敵意を持った人が入ってこない限り、何も恐れることはない」(p49)のです。
それなのに私は「あの人に嫌われていないかな…」と他人の気持ちを詮索して、自分の身体の中心ではなく他人の身体の中心ラインに合わせて生きていました。
身体の中心ラインは細ければ細いほど急所に当たりにくくなるのですが、相手に中心ラインを合わせてしまうとそれだけ幅ができてしまいます。
なので、すぐに他人の言動に傷ついてダメージを受けて、自分がブレブレになってしまっていたのです。
相手の気持ちが手に取るようにわかると思っているとしたら、それは相手の家の冷蔵庫を開けてしまうような、厚かましい図々しい人間ということだったんです。(p32)
この言葉は非常に衝撃でした…。
他人の気持ちを慮れるのが優れた人で人に好かれる人だと、今までずっと思っていました。
だけど、人にはそれぞれ「他人には知られたくない気持ち」や「隠しておきたい本音」というものがあります。
私にだってあります。
なのに、そこをこじ開けて相手の気持ちを「知りたい!教えて!」と詮索することは、他人の家に勝手に入って冷蔵庫を開けて見ているのと同じなんです。
人や自分は確かに「分かり合いたい」という欲求を持っていると思いますが、それは「本音を分かり合うこと」では解決しません。
自分と同じように、他人にも「見てほしい自分のキャラクター」があって、その「キャラクターを認めて理解してほしい」のです。
内面をさらけ出して分かり合うことは、できません。
だけど、本当に必要なのは「一生懸命作っている表面的なキャラクターを、そのまま受けてめてあげること」なのです。
「自分が下」という気持ちを打ち消すためにマウンティングする(p75)
実はマウンティングしてくる人って「自分のほうが下!」だと思っているから、「自分が上」だと証明したくてマウントを取ってくる発言をするのです。
非常に腑に落ちました。
なぜいちいち自分がすごいアピールしてくるんだろう?と思っていたし、マウンティングされると自分もマウントを取る発言をしてしまって、後ですごい不快感が残ってしまいます。
だから、マウントを取ってくる人も嫌だし、その人に影響されないようにしていたけれどやっぱりイライラするし、そのイライラも結構な日数引きずってしまいます。
しかし、マウンティングしてくる人は動物的な発作を起こしているアニマルだと考えた時に、反応してしまうと自分もアニマルになってしまいます。
(本書では哀れみの観点から説明されています)
マウンティングしてくる人はアニマルでペットだと考え、しっかり上下関係を作らなければなりません。
なので、マウントをされた時に弱いふりをするともっともっとマウントがひどくなります。
ペットと同じで、自分にとって好ましくない発言をされた時は無視をして、「私のペットじゃない!」と心の中で認識するだけで、マウンティングしてくる人からきちんと適切な距離を取れるようになります。
そっかー、自分のほうが下だと思ってるのね!と気づくだけでも、イライラはかなり静まります(笑)
嫉妬が怖くて、不幸な選択をしてしまう(p136)
これは無自覚にものすごくありましたね…。
なぜかいつも良いところで他人にかっさらわれてしまったり(大嶋先生のラスベガスの話ほどではありませんが…)、分かっていたのに失敗したり、やれば上手くいくと確信があるのになかなか取り組めずに怠けてしまったり。
これって、全て他人からの嫉妬を避けているから、無自覚に失敗するような選択肢を選んでしまっていたのです。
「嫉妬」というと他の大嶋先生の著書でも何度も繰り返し書かれていますが、本当に自分では気づかないんですよね。
だけど、嫉妬された時の威力は半端なく凄まじく苦しいです。
大嶋先生の他の著書の内容になってしまいますが、嫉妬の電気ショックを何度も浴びることによって、苦痛がいつの間にか快感になってしまい、「失敗するのが心地良い」となっているから「哀れな自分」でいる選択を無自覚にしてしまう。
そうやって、自己犠牲をして請け負ってしまっているんです。
「だって、私が幸せになったら、他の誰かが不幸になるかもしれない…」確かにそんなことを思っている感覚が、自分の中にはあります。
この対処法として紹介されている呪文がとても心地良く、もしダメな選択をしてしまいそうになったら「人は私に憧れている」と唱えると自己犠牲の選択肢を選ばなくなります。
(逆説だそうです)
大人になったら、好き嫌いなく、誰とでもおつき合いしなければと思っていたのですが、「大人になったら」という時点で、自分が子どもだと認めていることになります。(p200)
たしかに!と非常に納得しました。
小学校の頃に「友達100人作りましょう!」とか「みんなと仲良くしないといけないよ」とか、家族や担任の先生に言われたことはありますか?
私は直接的に言われた覚えはありませんが、大人になった今でもその考えが根底に眠っていて「好き嫌いをしてはいけない!」と思ってしまっていたのです。
子どもの頃に「好き嫌いせずに何でも食べましょう!」と言われていて、私はその通りに「嫌いなものなんてない!」とパセリまで食べていました。
(本当は苦くてそんなに好きじゃなかったけど、「パセリ好きなんだ!」と言いながら)
だけど、大人になった今、自分で好き嫌いを知っていて、自分の身体が喜ぶものだけを選んで食べることができます。
それが、大人なんです。
自分の好き嫌いを優先して人間関係を整理することは、実は大人への道だったのです。
スナック菓子やカップラーメンを食べた次の日は、なんとなく体が重怠くて頭も働きません。
だけど、野菜いっぱいのサラダや野菜カレーを食べた次の日は、なんだか不思議なぐらい体が軽くてテキパキ動けます!
それと同じように、人間関係にも実は会って話すと調子が悪くなる人と元気になれる人がいるはずです。
話した後に「悪いことを言ったかもしれない…」などと後悔の気持ちに苛まれてしまう人間関係は、身体に悪い人間関係です。
食べ物と一緒で、不快な人間関係から距離を置くと禁断症状が出て、「この人から離れたらダメかもしれない…!」と苦しみや喪失感が出てくるかもしれませんが、それこそが身体に毒だった人間関係であった証拠です。
(恋愛でよく起こりますよね…)
感想、自分の変化
すでに上で書いてしまいましたが、私がこの本を読んで一番変化したことは「食生活の変化」です。
今まで「ポテトチップスは太るから食べちゃダメだ」とか「お菓子ばかりだと体に悪い」から、なんとなく「身体に良いものを食べなければ!」と思っていました。
だけど、少しでも人間関係で嫌な目に遭ったり、誰かに感情を揺さぶられるとすぐに「身体に悪いもの」を摂取してしまっていました。
「何でちゃんと出来ないんだろう?」と自分を責めても、何も解決しません。
だけど、「身体にいいものを摂取した後に自分が元気になるもの!」ということをこの本を読んで知って、きっと私の中に無意識の種が蒔かれたのでしょう。
「摂取してはいけない/良い」という選択肢ではなく「元気になる/ならない」の基準で考えた時に、きちんと身体に良いものを選べるようになっていました。
意識的なところで言うと、「これを食べたら明日、体が怠くなるよな~」と考えたりします。
意識的な判断が「良い/悪い」なら、「元気になる/ならない」は「心地よい/不快」の判断基準になります。
私たち人間は、意識で判断するより「快/不快」で判断するほうが、自分の無意識が望んでいるほうを選ぶことができます。
意識でコントロールしようとすると、逆に正反対の行動を取りやすくなってしまいます。
「快/不快」の判断の仕方がイマイチ分からなかった人は、ぜひ「摂取した後に元気になるかならないか」で考えてみてください。
人間関係は、本当に食べ物と全く同じです。
人間関係が豊かだと、収入が低くても幸福度が高いという研究結果を以前知りましたが、収入が高くても心が貧しかったら豊かさを感じられないと思います。
豊かな人間関係を育むために、まずは「快/不快」で人間関係の断捨離をおこなっていっても良いかもしれません。
人間関係の断捨離をして、尊敬できる人とのみ交流が出来るようになると、自然と食べるものも変わってきますし、その逆もあり得るとはずです。
自分のまわりに不快な人ばかりいる!と思っていたけれど、気づけば不快な人がいなくなり、不快な人がいても「あ、距離をちゃんと適切に取らなければ!」と自覚できるようになりました。
以前は近づいてはいけない人に「好かれなければ!」と考えてしまって、本当は不快なのにどんどん近づいていっていましたが、今では「不快は身体に毒!」と認識できています。
なんとなくずっと「なんだかイライラするなあ、会いたくないなあ」という気持ちでいたけれど、何がそうさせているのか分からなかったので、きちんと不快な人と距離を開けられなかったのだと思います。
理由が分かれば意識して対処できますし、一度でも「心地よい距離感の人間関係」を知れば、その感覚を掴んで、次も不快にならない距離感をキープできます。
3年前はあれだけ人間関係に苦しめられていたのに、「ま、いっか」の本を読んで知らぬ間に本当に好きな人だけがまわりに残りました。
そして、対処法を知っている私は、この先自分の感情を振り回してくる不快な人に出会っても、もう以前のように苦しまないだろうという自信があります。
まとめ
まあ、そんなことは言っても、第1章なんかは結構自分の普段の行いにグサグサくる内容だったので、なかなか読み進められないかもしれません。
だけど、読む価値は非常に高いと思っています。
わずか700円ほどで人間関係の苦しさがやわらぐのであれば、読んで損はないのではないでしょうか。
非常に濃くてタメになること間違いなしです!
相手が距離を開けずにガツガツ近づいてくるタイプだから、自分がきちんと距離を開ける必要がある。
なぜ、まず自分が人間関係で嫌な目に遭うのか?その理由の種類とさまざまな対処法は、即実践できる内容ばかりです。
フットインザドアやドアインザフェイス、ダブルバインド、ツァイガルニク効果や返報性の原理などの心理学テクニックも紹介されています。
ぜひ手に取って、自分に効果的な呪文やテクニックを試して見つけてみてください。
興味を持って楽しんでやっているうちに、きっといつの間にか自由に人のことを気にせずに羽ばたけているはずです。
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