クマと言えば、私の中では怖い熊と可愛いテディベアの両方が出てきます。
だから、今日書くブログはどちらの熊?と思ってみると、怖い顔をして今にも襲ってきそうな熊が瞼の裏に浮かんでくるのです。
人間を襲う怖い熊…でイメージした時に思い出すのは、『真説 ザ・ワールド・イズ・マイン』というコミックです。
『キーチ!』とか『宮本から君へ』を描いた新井英樹さんの作品の一つです。
新井さんの作品を全て読んだわけではありませんが、一時期めちゃくちゃハマって新井作品を読み漁っていました。
新井さんが描く人間関係や天才、天才に憧れる凡人の描写がものすごく好きで、『真説 ザ・ワールド・イズ・マイン』も『キーチ!』もその他の作品も何度も何度も繰り返し読みました。
えぐいのが好きではない方にはオススメできませんが、行動や心理のえぐさも含めて「ああ、これが人間なんだな」って思わせられます。
特に『ワールド・イズ・マイン』は、天才モンちゃんと何者かになりたくて道を踏み外したトシの対比が心を打たれます。
一度目読んだ時は「何このえぐい話!」で終わって、二度目読んだ時は「でも、どっちの気持ちも分からなくはない」で、三度目以降はもう何回読んでも「何が正しいか分からない」です。
人によって賛否両論、意見が分かれる作品かもしれません。
幼い頃の私はきっとトシのような人間で、強い者に憧れて善悪の判断なく流されていってたかもしれません。
「力」に憧れていたのは、自分が「力を持っていない」と思っていたから。
自分にないものを、ただ欲しかっただけなんです。
でも、気づいたらモンちゃんはなぜか神だと崇められていて、トシだけが非難されてしまっている。
ああ、結局凡人の人生ってこうなるのか…となんだか悲しい気持ちになりました。
(あくまで私個人の意見であって、トシも天才だったのかもしれませんが)
ちなみにこの漫画に出てくるヒロイン・阿倍野まりあが大嫌いでした(笑)
お節介だしモンちゃんモンちゃんうるさいし…と思っていたけれど、何年か経って読み返してみた時に「まりあみたいになりたい」と切実に願う自分がいたのです。
きっと、自分が漫画の中の登場人物に嫉妬していたのだと思います。
嫉妬の感情が解けた時に、その人の素晴らしさを心に見ることができて「まりあのように聡明で明るく、度胸があって美しい女性になりたい」と思ったのです。
いろいろネタバレしたかもしれませんが、人間関係のドロドロの話が好きな方にはオススメです!
人間関係のドロドロで人の深層心理を描いた傑作だと思っている作品が他にもあります。
中村珍さんの『羣青』です。
数年前に映画化もされていましたが、もうこのストーリーが大好きで大好きで…。
読んでいたのは、私が20代で最も病んでいた時期です。
レズビアンの女性が大好きな人のために殺人を犯したとろこから物語は始まります。
メインの登場人物は女性2人で、どんどん二人の仲は険悪になっていき、最初聡明だと思っていた“彼女”は実はとんでもない虐待をされて育ってきた女性だったというのが分かります。
優しくされても突っぱねる“彼女”に“あーし”はどう対応して良いか分からずにイライラしたりしてしまうけれど、最後は2人、お互いの手を取り合うのです。
私は“あーし”になりたくて、“彼女”の方にとても共感しながら読みました。
何度読んでも泣いてしまいます。
「健康」な人には分からない苦しみを背負った“彼女”は、いろんなことを人と分かり合うのを諦めて、大事なことを言えなかったから殺人を頼むしかなかった。
平気な顔をして、2人は殺人を犯してしまうのです…。
自分がそんな「第二の自分」みたいな人を救いたいからFAP療法を行っていると言うと、とても大それたことを言っているような感じになってしまいますが、今「死にたい」と苦しんでいる人に「こんな方法もあるんだよ」というのを少しでも多くの人に知ってもらいたいと思っています。
「死にたい」という気持ちは、誰に聞いてもらってもなくならないと思っていました。
私は占い師もやっていますが、自分が20代の苦しんでいる時期に占いという場所でも良いから、せめて「苦しみを人に話す場」があるということを知っていたら、もう少し楽になるのが早かったのかもしれません。
当時から占う側だった私は、なぜか「人に悩みを聞いてもらう」という発想が全くなかったのです。
(その頃はプロの占い師になる前でした)
なので、占いの世界に入ってから「こんなに多くの人がどこにも相談できずに悩んでいたのか」と知ると同時に、苦しんでいる人の苦しみを少しでも軽くしてあげたい…という気持ちも強くなっていきます。
だけど、自分に知識や技術がないと、誤った対応をしてしまいかねません。
「知っていること」と「知らないこと」の違いは、とても大きいものだと思っています。
どうか一人で悩みを抱えて「自分なんか…」と思っている人こそ、人との関わりを諦めないでほしいと思っています。
今の世の中、SNSやインターネットでお手軽にたくさんの人と繋がることができて、それは諸刃の剣かもしれませんが、救いを求めている人にとっては大きな救いへの第一歩となるのではないでしょうか。
たとえ身の回りに気の合う人や話を聞いてくれる人がいなかったとしても、家から一歩も出ずに人と繋がれるのはすごいことだと思います。
正しい使い方、適切な距離感で関わることで、自分自身を立て直すことが出来るかもしれません。
「自分は一人」たしかにそうかもしれません。
だけど、私のように諦めずに苦しみの中から這い上がりたい!ともがいた結果、出会う素晴らしい仲間ができるかもしれません。
そんな時はどうか「心よ、」と問いかけることも思い出してみてくださいね。
本日のメタファー:熊、クマのぬいぐるみ
―――――
中村珍さんの『羣青』です。
コメント